東証は企業各社に「資本コストや株価を意識した経営の実現」を求めてきました。企業は累進配当やDOE(株主資本配当率)基準を導入するなど配当による株主還元により、その要求の一部の達成に努めようとしています。
しかしながら、8月5日のブラックマンデー、9月27日の自民党総裁選での石破さんの選任以降、日経平均は4万円の上を目指せない状態です。今年7月に4万2千円の日経最高年を更新した時点では、配当利回りが4%を越える銘柄は大分少なくなりましたが、12月時点では5%を越える銘柄も多く見られます。
2024年も12月に入り2025年の新NISA枠の使い道を考える季節です。そこで、2025年新NISA・成長投資枠で仕込みたい将来的に増配も期待できる高配当銘柄を考えてみました。みなさんの参考にもしてもらえたらと思います。
今後の増配も期待できる高配当な大型株5選とおまけ
今回紹介するのは、累進配当またはDOE基準を宣言していたり、株主還元方針の変更が期待できる銘柄をえらびました。すべて超がつくほどの大型株でその安定性と、異なる業種から選定しリスク分散も意識しました。
銘柄 | 株価 (12/10時点) | 配当 (年間) | 配当 利回り |
武田薬品 | 4,114 | 196 | 4.8% |
双日 | 3,150 | 150 | 4.8% |
JFE | 1,743 | 100 | 5.7% |
MS&AD | 3.394 | 145 | 4.3% |
東ソー | 2,074 | 100 | 4.8% |
ソフトバンク | 198 | 8.6 | 4.3% |
誰もがご存じの大型株ですが高配当の状態にあり、2025年新NISAの使い道を考えるうえで有り難いかぎりです。
武田薬品
一般的には、「アリナミン」「ハイチオール」といった商品でおなじでしょう。同時に、がんや、中枢神経、消化器系の医薬品の8割以上を北米や欧州向けに占めるグローバルな日本首位の製薬企業です。売上で2兆円、時価総額は6兆円を遙かに超えています。
同社は、年間配当180円/1株を15年間維持してきました。それでも有り難いのですが、今年2024年6月の株主総会で累進配当を宣言し、2024年度は年間196円/1株と大幅増配してくれたのです。
しかし、増配の影響もあり2024年度の配当性向は200%を越えており継続性の懸念からか株価の上昇は押さえられています。ただ、自己資本比率は50%近く、過去15年以上配当を維持してしてきた実績からも現状維持以上は継続してくれると考えています。
双日
双日は、三菱商事・三井物産を含む5大商社に豊田通商を加えた7大商社の一角です。2003年にニチメンと日商岩井の合併により誕生し、売上で2.4兆円、時価総額で0.7兆円に達します。
同社は、「中期経営計画2026」において株主資本DOE4.5%とした累進的な配当方針と機動的な自己株式の取得を宣言しました。2024年度の年間配当も150円/1株と2023年度の135円/1株から大幅増配し、その方針を実行しています。
当社は、自動車関連を主力事業としています。今回の大統領選においてトランプが選出され、関税の上昇やトランプを後押ししたイーロン・マスクのテスラなどEV車への肩入れ懸念が、事業リスクとして株価の上昇を押さえていると考えています。
ただし、PBRは0.7倍に満たず割安で、今回の増配後も配当性向は30%程度なので累進配当の実行は問題ないと考えています。
JFEホールディングス
JFEホールディングスは製鉄を担うJFEスチールやエネルギー・環境システムの設計・建設を担うJFEエンジニアリングなどを傘下に持つ持株会社です。連結売上で5兆円、時価総額で1兆円を越え、鉄鋼の4割強をグローバルに販売します。
同社は、いわゆる景気敏感株で業績に応じて配当が大きく変動してきました。12月の日経新聞の取材において、2026年3月期からの中期経営計画で新たな配当方針の採用を検討し、減配懸念を和らげると発言しています。
現時点では、中国経済の悪化や米国の関税引き上げ懸念により業績悪化が懸念され、株価の下落が続き非常に高い利回りとなっています。しかしながら、現在の配当性向は30%程度、PBRも0.4倍と非常に割安な状態ですので、中期経営計画の発表を先回りして仕込むチャンスと考えています。
MS&AD
MS&ADは三井住友海上保険、あいおいニッセイ同和損保などを傘下に置く保険持株会社です。経常収支で3.5兆円、時価総額で5.5兆円を超える金融グループで損害保険を中核とします。
各金融機関は、投資目的でなく取引先との関係維持のために保有する政策保有株の売却により、保有株が下落した際の財政状態の悪化を押さえようとしています。同社も、2030年までに保有する政策保有株3.6兆円を売却し、成長投資や株主還元に振り向けると発表しました。また、政策保有株の売却による特別配当を除く普通配当に関しては減配は行わないと中期経営計画において宣言しています。
特別配当は2030年までと限定的ではありますが、当面の間は高配当の維持が期待できそうです。
東ソー
東ソーは、苛性ソーダと塩素、そして水素の生産を中核とする化学企業です。苛性ソーダは、紙・パルプや化学繊維、塩素は塩ビ樹脂や殺菌・漂白など私たちの生活に密着した製品の素材として活用されています。苛性ソーダなど多数の国内シェアトップ製品を擁しています。
同社は安定配当を基本とし、配当性向は30%を目安とする株主還元方針を示し、累進配当とは明示されていません。しかしながら、ここ10年以上減配はされておらず、むしろうち7年は増配しており、実質的な累進配当銘柄と言えます。しかも、自己資本比率は60%を越え、PBRは0.8倍程度と割安です。
景気敏感株の位置づけで業績や株価の浮き沈みは大きい銘柄です。2025年度からの次期中期経営計画に累進配当を宣言する可能性もあり、宣言後は株価の安定も期待できそうです。
ソフトバンク(おまけ)
説明不要かと思いますが、ソフトバンクは孫正義率いるソフトバンクグループの連結子会社です。LINEヤフーやPAYPAYなどを傘下に持つ携帯電話を媒体とした事業を展開する総合通信企業という位置づけでしょうか。
同社は、2024年9月に株式を10分割し、現在2万円程度で100株を購入できるようになりました。10分割前で86円/株を長年継続しており高配当株と位置づけられています。
しかも、2025年3月末から100株を1年間継続保有すると1000円のPAYPAYポイントが付与されるので、実質利回りは更に高くなります。新NISAの成長投資枠は240万円までですから、もし端数が出たときにこのソフトバンク株を活用することで無駄なく枠を活用できそうです。
まとめ
現在高配当のまま放置されている理由はそれぞれの銘柄にあります。リスクも踏まえた上で、短期的な株価の上下は気にせず、長期保有による高配当と将来的な株価上昇を享受できると考えています。自分の保有方針にあった銘柄を、厳選したツールやアドバイスで選択するのもひとつの有効な手段かもしれません。